特集 プレシジョンメディシンの現状と未来
特集にあたって
プレシジョンメディシンの現状と未来
The Lipid Vol.29 No.2, 12-13, 2018
プレシジョンメディシン(precision medicine)は「精密医療」と訳される場合もありますが,まだ一般に認知されたネーミングではありません.具体的には,個人の遺伝子情報などを含む詳細な情報をもとに「より精密な対応を行う医療」ということで,個別化医療(予防・先制医療を含む)やゲノム医療の延長線上の概念です.
プレシジョンメディシンという言葉が一躍有名になったのは,オバマ米大統領が2015年の一般教書演説で発表した「プレシジョンメディシン・イニシアチブ」からです.2億ドル余りの国家予算を注ぎ込み,効果的な癌治療の開発促進,米国国立衛生研究所(NIH)による遺伝子,生活環境を含めた大規模な疫学研究の推進,さらには個人情報保護,遺伝子解析などの規制の整備などを進めるという内容です.
これまでにも,個別化医療については「オーダーメイド医療」や「テーラーメイド医療」という言葉で表現されてきました.実際,個々人に適した治療が選択されることは,治療の効果が高まるだけでなく,副作用を避けられる利点があります.特に「プレシジョンメディシン」という言葉が用いられる理由としては,より高精度・大規模の遺伝子解析が可能になったこと,分子標的薬を含む治療薬の開発が進んだことから,患者を上手く分類して適切な治療を選択するシステムが可能となってきたからです.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。