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巻頭言

脂質異常と循環器疾患 日本から発信した基礎・臨床・疫学のエビデンス

磯博康

The Lipid Vol.29 No.1, 1, 2018

1973年に遠藤章らによるメバスタチンの発見を契機として種々のスタチン薬が開発され,高LDL血症患者での虚血性心疾患のリスク低下効果が証明されることで,ほかの脂質低下薬の開発と相まって,脂質異常症の薬物治療は飛躍的に発展した.
一方,日本人の脂質異常と循環器疾患の疫学は1960年代の小町喜男らの研究に端を発する.秋田と大阪の一般住民の比較研究であり,脂質異常の割合の少ない秋田では大阪に比べて虚血性心疾患が低率であったものの,脳卒中は高率であったことから,脂質異常が両疾患の共通の危険因子ではないこと,そして総コレステロールの低値群では脳内出血のリスクが高いことを見出した.元来日本人は肉食より魚や大豆を中心とする食文化を有し,血中の総(LDL-)コレステロールのレベルは欧米人に比べて低く,虚血性心疾患の死亡率は過去から現在にかけて世界最低レベルを維持してきた.一方で,日本は1960年代,世界ワースト・ワンの脳卒中多発国であり,この半世紀で脳卒中は大きく低下したものの,現在でも虚血性心疾患よりも数倍高率である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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