糖尿病連携パスを巡る諸問題
Ⅰ 地域における糖尿病医療連携パスの現状 大阪地域における糖尿病連携パスの実践と成果
Diabetes Frontier Vol.22 No.2, 140-144, 2011
はじめに
急増する糖尿病患者が全国どこにいっても均質な糖尿病診療を継続的に享受できる仕組み作りが急務である。わが国の糖尿病患者890万人に対して,日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医は約4,000人しかおらず,専門医1名あたりが管理する糖尿病患者数は実に2,000人を超え,糖尿病専門医1名あたりが適正に管理できるとされる患者数300~500人(日本糖尿病学会資料より)をはるかに超える。したがって,糖尿病専門医とかかりつけ医が役割分担をしながら糖尿病診療にあたり,質を担保しながら数の問題を克服しうる糖尿病地域連携パスに注目が集まる。全国各地でさまざまな糖尿病地域連携パスが運用されているが,本稿では,糖尿病に関する病診連携が以前より活発であった大阪地域における糖尿病連携パスの現状について概説する。
key words
糖尿病連携手帳/大阪市西部ブロック糖尿病地域連携パス/栄養指導/フットケア
I.糖尿病医療連携の必要性
2007年の厚生労働省の調査において,わが国の糖尿病患者は890万人,予備軍は1,320万人,その合計は約2,210万人と2002年の同調査に比べ約340万人(18%)の急増を認める。しかし,糖尿病は合併症出現まで自覚症状が乏しく,治療を拒む患者が多いため,糖尿病の受療者はわずか43%,継続治療者は40%にも満たない。特により厳格な血糖コントロールが必要な若年層の継続受診者は20%を下回る(図1)。
日本医師会・日本糖尿病学会・日本糖尿病協会を中心に糖尿病対策推進会議など国民への糖尿病の知識普及を目的にさまざまな活動が展開されるが,糖尿病専門医だけでなく,かかりつけ医や地域行政が一丸となり,糖尿病の教育と診療をなおいっそう強化する必要がある。また,糖尿病が4大疾病の1つに位置づけられたことに加え,早期発見・早期介入を目的にHbA1cを取り入れた糖尿病の新診断基準1)が導入され,糖尿病と正しく診断を受ける患者数のさらなる激増が見込まれる。したがって,かかりつけ医・病院・地域行政などであらかじめ合意の得られた方法を地域の医療従事者が共有し,糖尿病専門医とかかりつけ医,さらには眼科医や歯科医師が役割分担しながら,円滑に均質な糖尿病診療を提供できる仕組み,すなわち糖尿病地域連携パスの普及が待望される2)。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。