わが国における骨代謝研究のあゆみ
骨の超微細形態学研究の流れ
―科学の進歩は方法論の進歩にほぼ一致する―
THE BONE Vol.20 No.5, 21-26, 2006
骨や歯などの硬組織の形態学的研究は, 一般の軟組織, 細胞と異なり, その資料作成, 解析機器も多様で方法論的に極めて困難な場合が多い. それらを踏まえて, わが国における微細形態学的骨代謝研究の歩みを, 方法論の進歩, 工夫と重ね合わせて振り返ってみた. 「知」には「暗黙知」と「形式知」があり, それらの相互作用によって組織的な知識創造が可能になるといわれている. 私の専攻した形態学は感性, イマジネーション, 技術が主体となる「暗黙知」の占める割合が, 理論主導型の「形式知」を主体とする機能学より多いことはこの研究分野の特徴でもある. 時の経つのは早いもので, 私が超微細形態学を志してから, すでに45年の歳月が流れた. 科学史に残る20世紀最大のイノベーションの一つに電子顕微鏡の開発があげられる. 私が形態学の研究に取り組んだ時期はちょうど電子顕微鏡が生物学応用され始めたころで, 数年間は方法論の開発に全力をあげていた時代である. 電子顕微鏡を用いた骨や歯に関する研究は1968年ごろ, ちょうど米国, ナッシュビルのバンダービルト大学での留学を終えて帰国してからである. この時期にはすでに現在の電子顕微鏡学的細胞生物学の基盤はほぼ完成しており, 技術的には安定期に入っていた.
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