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特集 肥満症とメタボリックシンドローム:予防医学と治療医学の観点から

メタボリックシンドロームの概念の意義と肥満症との異同

中村正

Pharma Medica Vol.35 No.11, 13-16, 2017

わが国では,2005年に日本内科学会をはじめとする8学会でメタボリックシンドローム診断基準検討委員会が結成され,診断基準が発表された1) 。表に示すように,内臓脂肪の蓄積(ウエスト周囲長増加で表す)を必須項目として,高血糖,脂質異常,血圧高値の3項目のうち2項目以上を満たすものをメタボリックシンドロームとした。蓄積した内臓脂肪組織は,過剰な遊離脂肪酸(FFA)を門脈中に放出するだけでなく,TNF-α,PAI-1,レジスチン,アンジオテンシノーゲン,レプチン,アディポネクチンなどのアディポサイトカインと総称される生理活性物質を分泌する活発な内分泌臓器であり,内臓脂肪蓄積やアディポサイトカイン産生調節異常はインスリン抵抗性や高血糖,脂質異常,血圧高値などの各リスクを惹起するだけでなく,直接心血管疾患の発症につながる。したがって,メタボリックシンドロームを構成する心血管疾患のリスクのなかでも内臓脂肪蓄積は上流に位置しており,病態形成において中心的な役割を果たすと考えられる2) 。内臓脂肪蓄積を減少されることによって,効率的にメタボリックシンドロームの病態が一挙に改善されることからも,病態のみならず,介入を見据えた診断基準であるといえる。
「KEY WORDS」肥満症/メタボリックシンドローム/内臓脂肪/ウエスト周囲長

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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