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臓器移植をめぐる最近の話題;臓器移植法改正後の展開

拒絶反応と臓器移植;診断と治療に対する戦略

松本光司小池淳樹

Pharma Medica Vol.29 No.11, 59-63, 2011

はじめに
 臓器移植の拒絶反応を正確に診断することは,移植患者に対して免疫抑制薬治療を中心とした術後管理を行ううえで非常に重要である。臓器移植はヒトが免疫機構の進化の過程で獲得してきた働き,つまり生体防御反応に逆らわなくてはならない医療であることから,感染症などとの鑑別に際し,個体に対してときに正反対の加療を強いてしまう可能性があるため,慎重に診断を行わなくてはならない。拒絶反応はベッドサイドで観察される理学的所見や血液生化学検査および尿検査などにより,ある程度の診断を行うことが可能であるが,術後数ヵ月を経て出現した拒絶反応は,時として原疾患の再発や感染症との鑑別に苦慮する例が少なくない。このような症例に対しては組織生検による確定診断が求められる。また,診断が拒絶と確定した場合には,各種免疫抑制薬による加療が行われるが,拒絶反応の種類によっては,使用する免疫抑制薬の投与量や種類を慎重に選択しなくてはならない。本稿では実質臓器(主として肝臓および腎臓)の拒絶反応について述べると同時に,病理医の立場から拒絶反応の型による治療戦略に関して考察してみたい。

KEY WORDS
●臓器移植 ●拒絶反応 ●病理 ●免疫抑制療法

Ⅰ.拒絶反応の種類

 拒絶反応の種類に関しては,超急性拒絶反応,急性拒絶反応,慢性拒絶反応といった発症時期による分類が一般的に行われているが,発症メカニズムを考慮した分類として,細胞性拒絶反応(Tリンパ球関連型拒絶反応),液性拒絶反応(抗体関連型拒絶反応)がある。肝移植では,Tリンパ球関連型拒絶反応と急性(細胞性)拒絶反応がほぼ同様として捉えられ,抗体関連型拒絶反応と超急性拒絶反応が同一と考えられている。また,慢性拒絶反応に関しては,現在のところ原因に関する統一した見解が示されていない。腎移植では,病理組織学的な検索が肝臓に比し細分化されており,抗体関連型拒絶反応およびTリンパ球関連型拒絶反応ともに,急性反応と慢性反応に分け,さらに両反応の混在を疑わせる症例に対して,病理組織学的にボーダーライン変化として明確に定義している。しかしながら,ここでは従来の方法を用いて分類し,そのなかでTリンパ球関連型拒絶反応あるいは抗体関連型拒絶反応の関与について,治療に対する戦略を理解しやすいように述べることとする。

Ⅱ.拒絶反応の病理学的な分類

 以前は臓器移植の病理診断に関する統一した基準がなく,それぞれの施設および病理医による独自の判断が行われていたが,1991年に腎臓移植において統一基準作成のための会議が開催され,1993年に移植腎病理診断国際基準が発表された。これが広く使用されるようになり,この後他の臓器でもそれぞれの基準を作成するようになった。現在では,腎移植,肝移植はバンフの分類1)2),心臓移植はスタンフォード分類3),肺移植は国際心・肺移植学会分類4)が用いられ,骨髄移植では移植片対宿主反応(Graft-versus-host disease;GVHD)の診断に際し,一般にLernerによる皮膚5),McDonaldらによる腸管,肝の病理診断基準6)が使用されている。

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