<< 一覧に戻る
消化器疾患に対する内視鏡診療の進歩
詳細な診断法 大腸新生物のpit pattern診断
岡志郎
/ 田中信治
/ 茶山一彰
Pharma Medica Vol.27 No.3, 19-23, 2009
「はじめに」 現在の大腸拡大内視鏡は挿入性や操作性に関して通常の汎用機とスペックを含めて全く同等である1). また, 拡大観察そのものも通常観察の延長線上として左親指でズームスイッチを軽く手前に引くだけで行える手技であり, 大腸内視鏡検査の初学者にとっても容易に習得できる. 問題は拡大観察した所見をどう捉え診断するかという点であるが, これに関してはわが国では工藤らによるpit pattern診断学の確立2)により一般化され, 今や世界的に普及しつつある3). 本稿では大腸腫瘍のPit・pattern診断法について最近の知見もふまえ解説する. 「I. 大腸拡大内視鏡観察の臨床的有用性」 大腸病変に対する拡大観察の臨床的有用性として, (1)主観的要素が多い通常内視鏡表面微細構造所見の客観化が可能となり, 一般内視鏡医の通常内視鏡診断能(硬さ, 緊満感など)の差を穴埋めできること4)5), (2)大腸腫瘍の質的・量的診断法として, 非腫瘍との鑑別, 異型度診断, 早期癌の浸潤度診断3)-7), (3)内視鏡的粘膜切除(EMR)後潰瘍辺縁の微小遺残病変の確認と適切なトリミングを行うことによる局所遺残再発率の低下8)9), (4)結節集簇型病変などの大きな病変に対する内視鏡的計画的分割切除時の異型度の高い部位を切断しない切除ラインの設定8)9), (5)拡大観察による腫瘍の異型度, 浸潤度を考慮することによる冶療手技の選択や施行医の選択指標, (6)潰瘍性大腸炎患者において, 通常観察で一見緩解期にみえる際に拡大観察を行うことで詳細な重症度の評価(再生上皮の微細診断による組織学的炎症所見の判定)10)11), (7)colitic cancer/dysplasiaの早期診断に対する拡大観察の有用性12)などがあげられる.
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
新規会員登録
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。